似て非なる“毛筆”と”筆ペン”

皆さんはご祝儀袋の名前を書く時、どのような筆記具を使いますか?正式にはご祝儀袋は毛筆や筆ペンなどを使用するのがマナーです。中にはボールペンやサインペンなど使う人もいますが、これは筆や筆ペンで文字を書くのが苦手な人に多いようです。確かにこれらは普段から使い慣れていないとうまく書けないのは当然かもしれません。なぜなら、ほんの少しの力の入れ方で太さが変わるため、ボールペンやサインペンとは筆圧のかけ方が全く異なるからです。それだけではなく、毛筆と筆ペンにも大きな違いがあることはあまり知られていないのかもしれません。そこで両者の違いについて詳しくご紹介しましょう。

まず毛の種類。毛筆には獣の毛が使われいて、剛毛では馬・イタチ・狸など、柔毛では羊・猫・リスなどが一般的です。一方、筆ペンには合成樹脂が使われています。ただ高級なものではイタチ毛が使われることもありますが、ほとんどは合成樹脂を束ねたものにインクを吸わせています。

続いて歴史について。もともと日本では昔から文字を書く時には毛筆を使っていました。昔の書物を見ても筆と墨で書かれたものばかりです。では、筆ペンはいつごろから出現したのでしょうか。開発されたのは1972年ごろで、当時はボールペンやサインペンなどが出始めたため、毛筆離れが進んでいました。そんな中、何とか毛筆文化を残そうと文具メーカーが考えだしたのが毛筆の要素を持ったペン……つまり筆ペンなのです。いちいち墨をすらなくてもサッと取り出せて、毛筆より気軽に書ける筆ペンは瞬く間に人気を得たようです。

最後に描き心地。書き比べたことがない場合はあまり変わらないと思っているかもしれませんが、実は全く違います。筆ペンはインクなので濃さは書き始めも終わりも同じ濃さになりますが、力の毛筆は書いているうちにだんだん含んでいた墨が減ってくるのでかすれてきます。また、毛筆では方向転換がスムーズにできますが筆ペンでは少しテクニックが必要です。ですから、毛筆に慣れている人は筆ペンを書きにくいと感じるはず。

このようにそれぞれの特徴をよく理解したうえでTPOに合わせて使い分けてみるとよいでしょう。