墨と墨汁は一長一短!

小学生の時に書道の授業があったり、冬休みに書初めの宿題があったり、ほとんどの人は何かしらの形で一度は書道をしたことがあるのではないでしょうか。そして、おそらく墨汁を使って書いていたと思いますが、書道道具の中に固形の墨が入っていたはずです。何もわからず、硯で磨って遊んでいたという人もいるかもしれませんが、実は墨と墨汁は大きく違うのです。

固形の墨はほぼ天然成分でできています。油を燃やした煤ににかわや香料を入れて練り、形成してから乾燥させることで出来上がります。一方、墨汁は墨を磨らなくてもすぐに使えるようにと開発されたもので固まらないように合成樹脂の粉末や塩化ナトリウムが混ぜてあります。つまり、固形の墨が天然成分だけでできているのに対して墨汁は化学物質が混ぜてあるのです。

そして、両者の大きな違いは使い心地です。墨汁の一番の利点は濃度の安定という点です。いつも同じ濃度で書けるので濃淡ができることもありません。ただし、均一であるがゆえに平面的で立体感がなく、個性もありません。それに比べて固形墨は磨るというひと手間がかかりますが濃い色には何とも言えない重厚感が感じられます。また、作品に合わせて自分の好みの色合いでできるので、書道家の方たちはこちらを好まれるようです。


もちろん、墨汁を使ってもさらに濃度を高めるために固形墨を磨って足すという方法もあります。また、墨汁にも合成する成分によっていろいろなタイプがあるので、書き比べて自分が一番書きやすいものを選ぶといいですね。サラサラしたものから粘度の高いものまで様々ですし、固形墨のような書き心地を謳っているものもあるようです。ただし、天然成分の固形墨に比べて、化学成分が入っている墨汁のほうが筆の劣化が早いということです。どちらも一長一短があることを念頭に自分に合うものを選んでみてください